頭部外傷総論
頭蓋内の外傷
今回は頭部外傷において起こる頭蓋内の外傷性変化について有名なものを挙げて説明します。
交通事故だけでなく、転落、転倒等による怪我でも起こりうる疾患であるため、簡単な医学的な知識も含めて概説します。
頭部の解剖について
頭部が外表面から、皮膚、皮下組織、頭蓋骨、硬膜、くも膜、脳脊髄液腔、軟膜、脳という順番で層を成しています。
図1は人間の頭部を輪切りにしその断面を表したもので、その一部を拡大した図です(図1)。
先の層構造はご覧のような模式図となっています。それぞれについて見ていきます。
脳はご存知の通りシワの多い組織であり、たくさんの溝が存在します。
この溝に沿って、脳の表面を覆うのが軟膜です。軟膜の外側は脳脊髄液で満たされており、脳は頭蓋内でこの液体に包まれています。
そしてこの脳脊髄液を外側で囲うのがくも膜です。
くも膜は、この脳脊髄液の産生や吸収に関与しています。
そしてくも膜と接着している膜が硬膜と呼ばれる膜です。硬膜は人間の発生において頭蓋骨から形成される膜で、骨と密接に接着しています。
一方くも膜と硬膜との接着は弱く、簡単に剥がれます。くも膜と硬膜との間には血管が走行しています。
脳挫傷
脳挫傷は、脳そのものに損傷が加わり、脳実質において出血をきたします(図2A)。
初期では出血が不明瞭なことがあり、症状が改善しないことで少し時間が経ってから発見されることがしばしばあります。
その症状は脳挫傷の部位によって異なります。
脳挫傷とは
くも膜下出血
くも膜下出血は脳脊髄液腔で出血をきたす疾患です(図2B)。
図の通り、軟膜の表面に沿って出血が存在するため、画像診断では脳の表面に沿って出血による変化を認めます。
また脳動脈瘤の破裂で起こるのもこの出血です。
症状は激しい頭痛、嘔吐などです。
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対して外傷性のくも膜下出血では多くは対症療法および経過観察で改善することが多いです。
くも膜下出血とは
硬膜下血腫
硬膜下血腫は、くも膜と硬膜の接着が剥がれて形成された空間に出血の変化が存在する疾患です(図2C)。
この空間が形成された影響で血管損傷が起きて硬膜下血腫が起こるパターンと直接血管が損傷し、出血によってこの空間が形成されるパターンがあると考えられています。
症状は急激に起きた硬膜下血腫の場合、意識障害や麻痺症状が出現します。
緩徐に進行した硬膜下血腫の場合、失禁、歩行異常で発見されることがあります。
また、緩徐進行の場合は、頭部の画像検査でたまたま見つかることも少なくありません。
硬膜下血腫とは
硬膜外血腫
硬膜外血腫は、硬膜と頭蓋骨の強固な接着が剥がれるほどの出血です(図2D)。
このため受傷起点では頭部に強い外力が加わっており、頭蓋骨骨折を合併することが多いです。
硬膜下血腫ほど出血が広範囲広がることはありませんが、その受傷起点からは頭部以外の外傷も問題になることが多く、頭部以外においても注意しなければならない病態です。
硬膜外血腫とは
まとめ
今回は頭部外傷における頭蓋内の外傷性変化に関して、概説しました。
それぞれ各論の記事もまとめましたので、そちらもご覧いただき、頭部外傷後の障害でお困りの方はYKR medical consultまでご相談ください。
この記事の監修者
不破 英登
経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |