硬膜下血腫とは
硬膜下血腫とは
硬膜下血腫(以下SDH)は頭蓋骨内板に接着する硬膜と硬膜に接着するくも膜との間に何らかの原因でスペースが生じて出血をきたす、あるいは出血によってスペースが形成されることで、神経症状を呈する病態です。
正常では存在しないスペースが形成されるという点が前項で説明したくも膜下出血とは異なります。
硬膜とくも膜との関係
硬膜は頭蓋骨から発生する膜で頭蓋骨と強固に接着しています。
この硬膜とくも膜とは弱く接着しており、簡単に剥がれます。
また硬膜は頭蓋骨の縫合線に沿って膜が非連続となります。
一方、くも膜はこの骨縫合とは関係なく、硬膜と接着しているため、硬膜とくも膜との間にスペースが生じた場合、広範に広がり得ます。
受傷機序について
SDHは受傷者によっては弱い頭部外傷でも起こり得ます。
特に血液を固まりにくくする薬を内服されている患者さんで起こりやすいです。
また、いきなり硬膜下に出血をきたす症例の他に、まずくも膜に亀裂がはいり、ここから硬膜との間のスペースに脳脊髄液が入り込み(硬膜下水腫と言います)、これが徐々に進行することで血管が破れて遅れて出血に至る症例も多いです。
症状について
急激に出血が広がった場合、意識障害が起こり得ます。
一方硬膜下水腫が徐々に進行しSDHに至った症例では、歩行困難や失禁等の症状で見つかることが多いです。
SDHの診断について
SDHは頭部の外傷を起点とするため、外傷性SAHと同様に初療ではCT検査によって診断がなされます。
- CT
CTでは硬膜下に出血を示す高吸収を同定することで診断がなされます。
外傷性SAHや他の頭部外傷によって引き起こされる頭蓋内の出血もまずはCTにて診断がなされます。
- 単純X線写真
骨折に関して評価可能ですが、CTで診断可能なため今はほとんど行われません。
- MRI
SDHを疑ってこの検査をいきなり行うことありません。
ぼーっとしているとか明らかにフォーカスがはっきりしないような神経症状を示す、患者さんでMRIでの検査が行われ、この疾患が見つかることをしばしば経験します。
SDHでは、頭蓋内で起こるほかの外傷性疾患を合併することがたびたびあるため、これらの有無を確認することにおいてもCTは有用な検査です。
前述したように血液が固まりにくい薬を飲まれている患者さんは、そうでない患者さんよりも出血するリスクが高いためこのCT検査を行うのがよりよいですが、いきなりは検査をせずご自宅で症状を注意深く観察して、何らかの異常が見られた際にCTを行うことも多いです。
この対応は初診時にCTが撮られて何も見つからなかった時も同様です。
治療方法と治療期間について
SDHの血腫量が多く脳を圧排している場合、手術にて頭蓋骨に穴をあけて血腫を吸引する治療が行われます。
その後、頭に引き続き血腫を外に出すためのドレーンという管を留置します。
この血腫吸引でもSDHが改善しない場合、出血部位によってはカテーテル治療によって止血が行われるケースもあります。
認定される後遺障害等級の種類について
SDHで認定されうる後遺障害等級は以下のとおりです。
介護を要する後遺障害の場合の等級
等級 | 説明 |
1級 | 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
後遺障害の場合の等級
等級 | 説明 |
3級 | 三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級 | 二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級 | 四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級 | 十 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
>>後遺障害の診断書は書いてもらえる?|メリット・デメリットについて
まとめと注意点
SDHは頭部の外傷で起こる疾患の一つです。
脳の圧排によって症状が出現するため、適切な診断、治療を要する疾患です。
SDHでも認定されうる後遺障害の等級があるため、後遺障害の認定にお困りの方はご遠慮なくYKR medical consultへご相談ください。
この記事の監修者
不破 英登
経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |