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2021/10/03

腱板断裂とは

公開日: 最終更新日:

腱板断裂とは

腱板は、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋腱、肩甲下筋腱から成ります(図1)。

 

いずれも上腕骨の骨頭に付着する腱であり、肩関節運動や安定性に関わる重要な構造です。

 

腱板断裂は腱板損傷のうち腱板が断裂をきたした状態で、一つの腱あるいは複数の腱が断裂した病態です。

 

なお腱板損傷には外傷性損傷の他に、退行性変化による損傷が含まれます。

 

 

腱板損傷の分類(図2)

  1. 変性:腱板が断裂せず肥厚、変性している状態
  2. 断裂:腱板が断裂している状態

a部分断裂:腱板が部分的に断裂しているもの

b完全断裂:腱板が全層性に断裂しているもの

腱板の解剖 腱板の断裂の図

 

 

受傷機序について

腱板損傷の内訳は内因性を背景とするものが半数、外傷すなわち外因性によって起きるものによって起こるものが半数と言われています。


腱板は肩関節運動による牽引、圧迫、摩擦といったストレスを受けます。

 

中でも棘上筋はその解剖学的構造から最もストレスがかかりやすく、加齢とともに変性、断裂しやすい腱です。

 

 

症状について

主な症状は痛みで眠れない」「肩が上がらない、力が入らない」「肩を上げるときの痛みといったものが多いです。


変性でも断裂でも基本的には類似した症状を示しますが、軽度の外傷によって腱板が断裂した場合、背景に腱板の変性が隠れている可能性があります。

 

診断について

腱板損傷は病歴や症状から疑われます。

 

外傷が原因である場合では症状の出現あるいはその増悪のオンセットが比較的はっきりしています。

 


肩挙上できるか否か、肩拘縮(関節が不自然に硬く可動域が不良な状態)の有無、肩挙上にともなう軋轢音の有無などの所見や筋萎縮の有無で疑います。

 

軋轢音や棘下筋萎縮があれば、腱板断裂を疑います。


腱板損傷が疑われれば骨性の異常がないかを単純X線写真を実施肩峰と骨頭間の狭小化を認めることが多いです。

 

さらに腱自体の評価としてMRIが行われ骨頭上方の腱板部に断裂の所見がみられます。

 

―各種画像検査

 

単純X線写真

腱板損傷が疑われる際にはスクリーニングも兼ねてまず撮影されることが多いです。


骨の所見によって内因性か外因性かを類推可能な場合があります。

 

しかしこの検査のみでは腱板損傷を直接的に診断できません

 

CT

外因性の病態が存在する場合、その病態に応じてCTが撮影されることがありますが、この検査によって腱板損傷を直接的に診断することはありません

 

しかし、肩痛の原因として骨由来の疾患が考えられる場合併せて実施されることもあるためCTが撮影されている場合、画像で指摘可能な他の原因を見落とさないことが重要です。

 

 

MRI

MRIは腱板の構造を捉えやすい画像検査です。

 

横断像、冠状断、斜矢状断で撮像することで、腱板付着部の評価が可能です。

 


腱板は比較的大きな構造であることから薄いスライスのシーケンスが要求されることは少ないため、細かい靱帯損傷に比べれば診断しやすい病態です。


どの程度損傷しているか(変性、部分断裂、完全断裂)も評価可能です。

 

治療方法と治療期間について

年齢や損傷の状況により主となる治療は異なりますが、急性期にまず行われるのは(時に三角巾を用いての)局所安静です。

 

その後は鎮痛薬の内服や外用、薬剤の局所注入、疼痛による運動制限が関節拘縮を引き起こさないよう患部関節の積極的な運動療法(リハビリテーション)などの保存療法が一般的に行われます。

 


損傷(変性、断裂)した腱板が元通りに回復することはありませんが、過半数の症例で保存療法により症状改善が期待できます。

 

それでも改善しない場合は再度の精査の後、年齢などの背景がゆるせば手術療法が考慮される場合があります。


手術療法の後は一般的に長期間の運動療法が行われます。

 

 

 

認定される後遺障害等級の種類について

交通事故など第三者による外傷によって発症した腱板損傷は後遺障害として等級認定可能です。

 

後遺障害の等級は以下の表の通りです。

後遺障害の等級表

 

>>後遺障害の診断書は書いてもらえる?|メリット・デメリットについて

>>後遺障害14級の認定に必要な通院日数は?認定率についても解説

 

まとめと注意点

腱板損傷は変性と断裂に分けられます。

 

腱板損傷の原因の内訳は内因性と外因性とが半々と言われています。

 

腱板断裂の直接的原因が外傷だと考えられる場合には、専門家による病歴評価、適切な画像診断が必要です。

 

適切な評価が行われた場合、症状に応じて等級認定が可能です。

 

>>外傷に関する上肢の3疾患

>>鎖骨骨折の症状や治療、認定される後遺障害等級の種類について

>>肩関節脱臼の受傷機序および診断、症状や診断について

 

医師による画像評価サービスは下記リンクから

画像評価サービス

 

監修医師

整形外科専門医 西本 圭佑

資格
・整形外科専門医

所属学会・研究会
・日本整形外科学会
・日本救急医学会
・日本人工関節学会
・日本重度四肢外傷研究会
・鶴舞骨折治療研究会(世話人)

2005年 
・島根大学医学部整形外科教室 実験助手
2008年 
・国立研究開発法人科学技術振興機構地域イノベーション創出総合支援事業 参加
2011年 
・島根大学医学部医学科 卒 岐阜社会保険病院(現 可児とうのう病院)

2013年 

・名古屋第二赤十字病院 整形外科

2015年 
・刈谷豊田総合病院 整形外科
2020年
・岡崎市民病院 整形外科 部長
2021年
・藤田医科大学 救急科総合内科

 

 


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