【症例で解説】後遺障害12級5号「鎖骨・肋骨の変形」認定のポイント(異議申し立てのポイントも!)
交通事故で鎖骨や肋骨などを骨折し、つらい治療を乗り越えたものの「依頼者が痛いといっているし、見たところ骨の変形もあるみたい」「それで異議申し立てしたのに、後遺障害が認定されない!」と納得がいかない思いをされていませんか?
その「骨の変形」、後遺障害等級12級5号に認定される可能性があります。
先日でもYKRメディカルコンサルトで受注した医師の意見書を添付して異議申し立てを行った結果、非該当から12級5号を獲得したケース(https://ykr-medical.com/archive/3019)があります。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/common/data/toukyu.pdf
国土交通省自動車損害賠償保障法施行令別表第二「後遺障害等級表」
しかし、この等級は認定のポイントが非常に特徴的で、知らずに手続きを進めると、本来受け取れるはずの正当な補償を逃してしまうケースが少なくありません。
この記事では、どのような場合に12級5号が認定されるのか、具体的な症例を交えながら、その認定条件と、異議申し立てをするときのポイントを徹底解説します。
目次
後遺障害等級12級5号とは?認定の鍵は「見た目の変形」
まず、後遺障害等級12級5号がどのようなものか、正確に理解しましょう。
後遺障害等級12級5号:「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」
ポイントは赤字で示した「著しい変形」という部分です。 これは、レントゲン写真上で変形が確認できるだけでは不十分で、「裸体になったときに、第三者が見て明らかにわかる変形」であることが求められます。
痛みや動かしにくさ(可動域制限)とは別の基準で、「見た目」が重視される特殊な等級なのです。
関連記事:交通事故鑑定書(意見書)の調査の流れや作成の費用・日数について解説
【症例別】12級5号が認定されうる傷病名と具体例
では、具体的にどのような骨折や変形が12級5号に認定されうるのでしょうか。症例を中心に見ていきましょう。
鎖骨骨折
バイク事故や自転車事故、シートベルトによる圧迫などで骨折しやすい部位です。
認定されうる症例
- 骨折した部分がずれたままくっついてしまい(不正癒合)、皮膚の上からコブのように隆起しているのが明らかにわかる。
- 左右の鎖骨のラインを比べたときに、明らかに形が非対称になっている。
ではここで、後遺障害が認められる場合の外見がどのようになっているかの一例をイラストで確認してみましょう。
首から肩にかけてのラインが滑らかではなく、骨が「ボコっと」隆起しているのが分かります。後遺障害12級5号の認定では、このように衣服を脱いだ状態で第三者が見て、明らかに分かる変形が残っていることが重要なポイントとなります。
肋骨骨折
胸を強く打ち付けた際に発生します。1本だけでなく、複数本を骨折することも多いです。
認定されうる症例
- 複数本の肋骨骨折により、胸の一部が陥没しているのが見てとれる。
- 骨折部が隆起し、ゴルフボール大のでっぱりが残っている。
- 肋骨の変形により、胸郭全体が歪んで見える。
ポイント: 肋骨の変形は、骨折した本数や部位は問われません。あくまで「裸体で見てわかる変形」があるかどうかが基準です。
胸骨骨折
胸の中央にある硬い骨で骨折は稀ですが、ハンドルに胸を強打した場合などに起こり得ます。
認定されうる症例
- 胸の中央が不自然にへこんでいる、または盛り上がっている。
肩甲骨骨折
背中側にある大きな骨です。
認定されうる症例
- 背中から見たときに、左右の肩甲骨の形や位置が明らかに違う。
- 変形した骨が背中に浮き出て見える。
骨盤骨折
非常に大きな力が加わった際に生じる重傷です。骨盤は腸骨・坐骨・恥骨などで構成されています。
認定されうる症例
- 骨盤の骨折・変形により、お尻の形が左右非対称になった。
- 腸骨(腰骨)の出っ張りが片方だけ削げ落ちたように変形しているのがわかる。
注意点: 尾骨(お尻の先の骨)の変形は、12級5号の対象には含まれません。
12級5号を勝ち取るための異議申立て2つの急所
一度「非該当」という結果通知を受け取ると、多くの方が「もうダメなのか…」と諦めてしまいます。しかし、こと12級5号(変形障害)に関しては、初回の申請で非該当となっても、異議申立てで認定を勝ち取れる可能性は十分にあります。
なぜなら、変形の「著しさ」の判断は、提出された書面や画像だけでは調査機関に正確に伝わりきらないケースが非常に多いからです。
初回申請が「偵察戦」だとすれば、異議申立ては「総力戦」です。ここでは、私たちが実際に異議申立てを行う際に、特に重要視している2つの急所(ポイント)を解説します。
急所①:ただの診断書ではない。「後遺障害に関する医師意見書」で変形を可視化する
非該当と判断された方の多くは、後遺障害診断書に添付されたレントゲン写真のみで審査を受けています。
しかし、12級5号の基準は「レントゲン上の変形」ではなく「裸体で見てわかる変形」です。これを証明するためには、医師に特別な意見書の作成を依頼することが極めて重要です。
この意見書に盛り込むべき内容は以下の通りです。
あらゆる角度からの写真
正面、側面、上から見下ろした角度など、複数の方向から撮影した鮮明なカラー写真を用意します。変形が最も分かりやすい角度や光の当て方を探して撮影することが肝心です。
写真へのマーキング
撮影した写真に、医師の手で直接「変形しているのはこの部分」「左右でこれだけ高さが違う」といったポインターや線を書き込んでもらいます。これにより、誰が見ても一目で変形箇所が分かるようになります。
「著しい」という魔法の言葉
医師の意見として、「裸体において、その変形は明らかに認識でき、著しいものと判断する」という、認定基準の文言を意識した一文を記載してもらいます。これは専門家である医師による「お墨付き」となり、非常に強力な証拠となります。
急所②:「なんとなく変形」を「数値」で証明する
「非対称になっている」「歪んでいる」といった主観的な表現だけでなく、可能であればその変形を客観的な数値やデータで示すことができれば、異議申立ての決定打となり得ます。
健側との比較測定
例えば、変形した鎖骨の最も突出した部分の高さを測り、反対側の同じ箇所と比較して「健側と比べて〇cm隆起している」と数値化します。
これらの証拠を揃えることで、「被害者がそう主張している」というレベルから、「客観的な証拠が変形の存在を明確に示している」というレベルへと、主張の質を劇的に高めることができます。
3Dスキャンによる立体モデル化(現実的ではありませんが)
費用はかかりますが、医療機関や専門業者によっては、患部の3Dスキャンが可能な場合があります。
体の表面形状を3Dモデルデータとして提出することで、変形の程度を立体的に、誰の目にも明らかな形で示すことができます。
初回申請で非該当となっても、それは証拠が足りなかっただけかもしれません。正しい戦略と十分な証拠をもって臨めば、結果は覆せます。諦める前に、ぜひ一度、交通事故案件の経験豊富な医師にご相談ください。
関連記事:後遺障害診断書が等級認定に必要な理由|作成の手順や記載内容は?
まとめ:第三者の医師に頼ってみましょう
12級5号は「骨の変形」という明確な基準がある反面、その判断は書類や画像の出し方で大きく左右されます。
非該当になったからといって諦めるのは早計です
- 医療記録をどう見せるか
- どんな写真や所見を添えるか
- 誰に証拠を作ってもらうか
この3つを適切に行えば、認定の可能性は大きく変わります。
YKRメディカルコンサルトのような医療鑑定サービスを活用すれば、専門医が症状を正しく評価し、法的主張をバックアップいたします。
他にも様々な事例を紹介しています。「これに当てはまるかも!」と思ったらご相談ください。
YKRメディカルコンサルトではオンラインで無料相談会を開催し、整形外科や脳外科の専門医と直接ディスカッションできる機会を提供しています。
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関連コラム:鎖骨骨折の症状や治療|偽関節や後遺障害等級の種類について
この記事の監修者
不破 英登

経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |