肩関節脱臼の受傷機序および症状や診断について
肩関節脱臼とは
肩関節は肩甲骨と上腕骨からなる関節で(図1)、肩関節脱臼は肩甲骨関節窩から上腕骨頭が外れた状態を指します。
頻度の高い脱臼であり事故やスポーツなど日常の様々なケースで起こり得ます。
受傷機序および診断について
転んで手をついたり、腕が後方へ強制的に牽引されることで脱臼が起こります。
診断は単純X線写真によって行われますが肩関節の向きを考慮した撮影を行う必要があります。
関節窩の骨折、関節唇損傷、下関節上腕靭帯損傷、すなわちBankert損傷を生じた場合、反復性に脱臼してしまうことがあります。
関節窩の骨折を有する場合(骨性Bankert)、その診断は比較的容易ですが、関節唇損傷や靱帯損傷によるBankert損傷では診断に苦慮することがあります。
このとき関節造影やMRIでの診断が必要なケースがあり、専門家による評価を要します。
症状について
脱臼のために正常な肩関節運動が障害されます。
これによって痛みを感じることがありますが、骨折を伴う場合はそれによる痛みも伴うことがあります。
反復性脱臼の場合も初期の脱臼と同様の症状が起こります。
反復性脱臼を繰り返すと関節軟骨の摩耗が問題となります。
また反復脱臼は整容的にも問題となる状態です。
治療について
受傷後はまず早めに整復を行います。
そのまま放っておくと整復困難となる場合や神経損傷が生じえます。
その後は鎮静薬により疼痛を抑え、肩関節の安定性を保つため肩周囲のリハビリを行います。
反復性脱臼となってしまった場合は手術が必要な場合があります。
この場合も肩関節の安定性を保つため肩周囲のリハビリを行います。
認定される後遺障害等級の種類について
肩関節脱臼では以下の等級が認められる可能性があります。
後遺障害
等級 | 説明 |
第8級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
第10級10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
第12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
初回脱臼で受傷機転と症状との因果関係を証明できれば後遺障害の認定を受けることは比較的容易です。
しかし反復性脱臼に至った場合は受傷機転と症状の因果関係がはっきりと分からなくなってしまうことがあり、後遺障害の認定時に問題となりえます。
知らず知らずのうちに症状が進行してしまっているにも関わらず後遺障害の認定を受けられないことは大きな問題といえます。
>>後遺障害の診断書は書いてもらえる?|メリット・デメリットについて
>>後遺障害14級の認定に必要な通院日数は?認定率についても解説
まとめと注意点
鎖骨骨折は知らず知らずのうちに症状が進行してしまっているにも関わらず後遺障害の認定を受けられないことは大きな問題といえます。
肩関節脱臼は外傷性脱臼の中では2番目に頻度の高い疾患です。
まずは受傷後に適切な治療を受けられることが肝要ですが、反復脱臼によって障害が残ってしまった場合でも専門家による評価によって後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
お困りのケースについて是非YKR medical consultにご相談ください。
>>鎖骨骨折の症状や治療、認定される後遺障害等級の種類について
この記事の監修者
不破 英登
経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |