後遺障害14級9号が非該当となったら|認定されるために必要な内容を整理
後遺障害14級9号の認定は、交通事故などによる後遺症の一つですが、認定されるためには一定の基準を満たす必要があります。
しかし、実際にはどのような基準で認定が行われるのかがブラックボックス化しており、非該当となるケースも少なくありません。
本記事では、後遺障害14級9号が非該当となる要因や対応策、非該当とならないためにできることについて詳しく解説します。
目次
後遺障害14級9号認定が非該当となる要因
後遺障害14級9号認定が非該当となる要因として、以下の4つが挙げられます。
- 症状が一貫していない
- 医学的に回復が見込める症状
- 画像診断での所見不足
- 通院記録の不足
規定としては、以上の4つの要因により後遺障害14級9号認定が非該当となるとされていますが、実態としてはブラックボックス化しています。
そのため、以下で説明する要因は、実態とは異なる場合があるため、あくまで一般論として参考にしてください。
症状が一貫していない
後遺障害の認定において、申請者の症状が一貫していない場合、認定が難しくなります。
症状が一定しない、あるいは診察時ごとに異なる内容を訴えると、後遺障害としての確実性が低いと判断されることがあるのです。
たとえば、痛みやしびれの部位や程度が毎回異なる場合や、日常生活での影響が説明と一致しない場合が該当します。
医学的に回復が見込める症状
後遺障害として認定されるには、症状が恒常的に存在するものであり、医学的に回復が見込めないものである必要があります。
例えば、治療を続ければ症状が改善する見込みがある場合や、既存の医学的な知見に基づいて回復が予想される場合は、後遺障害とは認められにくいのです。
画像診断での所見不足
後遺障害認定においては、レントゲン、MRI、CTスキャンなどの画像診断による医学的な裏付けとなる所見が重要です。
これらの診断結果が後遺障害となる症状の内容を裏付けるものである場合には、認定が得られやすくなります。
例えば、痛みや機能障害があると主張しても、画像上で異常が確認されるかされないかで、その結果に与える影響力が全く異なるものとなります。
通院記録の不足
後遺障害の申請には、継続的な治療とその記録が重要です。通院の頻度や治療の内容が不十分である場合、症状の持続性や重篤性が疑われることがあります。
また、治療を途中で中断している場合も、後遺障害の認定において不利に働くことが多いです。
さらに、接骨院や整骨院のような医業類似機関への通院か、それとも整形外科のような医療機関に通院していたのか、という点も審査対象として重要となります。
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後遺障害14級9号が非該当となった際の対応
後遺障害14級9号が非該当となった際の対応として、以下の2つが挙げられます。
- 異議申立て
- 後遺障害の認定基準を確認
それぞれの対応について、以下で見ていきましょう。
1. 異議申立て
後遺障害14級9号の認定が非該当となった場合、異議申立てを行うことができます。
異議申立てとは、認定結果に不服がある場合に、再度審査を求める手続きです。具体的には以下の手順で手続きを行います。
- 異議申立理由書の作成
- 追加の医療証拠の収集
まず、なぜ認定が不当であると考えるのか、その理由を詳細に記載します。
理由書の裏付け資料として、医師の意見書やカルテ等の医療記録、新たな医学的証拠があれば、これを添付することが有効的です。
次に、再度診察を受け、専門医による診断書や画像診断の結果を集めます。
特に初回の申請時に不足していた事実を裏付けるための証拠を補完することが重要です。
最後に、異議申立理由書を作成し、必要な証拠とともに提出します。自賠責保険会社が指定する所定の窓口に提出することになります。
異議申立ては、一度非該当となった後遺障害の認定を覆すための重要な手段です。
しかし、一度非該当となった判断を覆すためには、詳細かつ具体的な証拠が求められるため、慎重に準備する必要があるでしょう。
2. 後遺障害の認定基準を確認
異議申立てを行う前に、後遺障害の認定基準を再確認することが重要です。
認定基準を理解することで、自分の症状や証拠がどの程度基準に合致しているかを把握し、申立ての準備をすることができます。
まずは、公開されている労災保険や自賠責保険の後遺障害認定基準を確認し、自分の症状や診断結果が基準に該当するかどうかをチェックするのが良いでしょう。
あわせて、専門医に相談して認定基準に照らし合わせて自身の症状がどの程度該当するかを評価してもらったり、初回の申請書類を見直し、認定基準に照らして不足している情報や証拠がないかを確認したりすると良いでしょう。
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後遺障害14級9号非該当とならないためにできること
後遺障害14級9号非該当とならないためにできることとして、次の4つが挙げられます。
- 事故と症状の関連性を明らかにしておく
- 事故の直後から継続して通院する
- 事故の直後から症状が一貫していることを記録しておく
- 症状が重く持続的であることを記録しておく
これらを実践したからといって、必ず後遺障害等級が認定されるわけではありませんが、少しでも認定される確率を高めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.事故と症状の関連性を明らかにしておく
事故と症状の関連性を明らかにするためには、事故直後から詳細な症状の記録を残すことが重要です。事故の状況や身体の状態、症状の発生部位と程度を具体的にメモしておきます。
医師との協力が不可欠であり、事故直後に医師の診察を受け、事故との関連性を明確にするための診断書を作成してもらいます。
診察時には事故状況と初期症状を詳細に説明し、医師に事故との因果関係を確認してもらうことが重要です。こうした記録と医師の診断書が後遺障害認定の際に有力な証拠となります。
2.事故の直後から継続して通院する
後遺障害認定のためには、事故直後から定期的に通院し続けることが求められます。個人としては、通院を怠らず、医師の指示に従い治療を続けることが重要です。
医師との協力も不可欠であり、医師に定期的に症状をチェックしてもらい、治療の必要性を確認してもらいます。
診療記録を詳細に残してもらい、治療の進捗や症状の変化を文書に残してもらうことで、後遺障害認定の際に必要な継続的な治療記録を確保できます。
3.事故の直後から症状が一貫していることを記録しておく
事故後の症状が一貫していることを証明するためには、日々の症状を詳細に記録することが大切です。
痛みや不快感の部位、程度、頻度を具体的にメモしておきます。
医師との協力も重要であり、定期的に診察を受け、症状が一貫していることを医師に確認してもらいます。
診断書や経過報告書に一貫した症状についての記録を残してもらうことで、後遺障害認定の際に重要な証拠として提出することができます。
4.症状が重く持続的であることを記録しておく
症状が重く持続的であることを証明するためには、痛みや不快感の詳細な記録を日々続けることが必要です。
症状が日常生活にどのように影響しているかを具体的にメモしておきます。
医師との協力が不可欠であり、症状の重さや持続性を医師に評価してもらい、その評価を診断書に反映してもらいます。
定期的に検査を受け、持続的な症状の医学的証拠を収集してもらうことで、後遺障害認定の際に有力な証拠を提出することができます。
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後遺障害14級9号非該当の症状とそれに対する認定基準
後遺障害14級9号非該当の症状とそれに対する認定基準について、非該当にされがちな「むちうち」を具体例に挙げながら以下で解説します。
むち打ち症状と後遺障害14級認定
後遺障害14級9号非該当にされやすい症状として「むちうち」が挙げられます。
一般的な症状としては、首や肩の痛み、頭痛、めまい、手足のしびれなどがあります。
これらの症状は神経系の症状に分類されますが、症状を裏付ける証拠が用意できなかったり症状が一貫していなかったりすることがあり、後遺障害14級9号に非該当という判断を下されるケースが多いのです。
後遺障害14級認定の具体的な条件
後遺障害14級9号に認定されるためには、「局部に神経症状を残すもの」という基準を満たすことが必要とされています。
具体的には、以下の条件に当てはまることが必要です。
- 事故の大きさが相当程度であること
- 事故当初から継続して通院していること
- 症状が一貫していること
- 自覚症状と整合性の取れる他覚的所見があること
他覚的所見とは、客観的に認められる症状のことです。
例えば、医師による診察結果やレントゲン、MRIなどの画像検査、神経伝導速度検査、血液検査などの医学的検査などが挙げられます。
後遺障害14級9号に認定されるためにはこれらの条件を満たす必要があります。
そのため、症状が安定しないことや、自覚症状が他覚的所見に現れないことがある「むちうち」などの神経系の症状は、後遺障害14級9号に認定されにくいのです。
診断書と医師の意見の重要性
後遺障害として認定されるには、診断書と医師の意見の2つが重要です。診断書と医師の意見がなぜ重要なのかを以下でそれぞれ見ていきましょう。
1. 診断書の重要性と不十分になる原因
診断書は後遺障害認定において極めて重要な役割を果たします。
診断書には、事故による損傷の詳細や症状の一貫性、治療の経過が記載されており、これが認定の基礎資料となるためです。
一方、作成した診断書が不十分な場合は、認定において不利に働く場合が多いでしょう。
たとえば、症状の具体性が欠けている場合や、継続的な治療記録が確認できない場合などが挙げられます。
後遺障害の認定に必要とされる項目を満たすような診断書を用意してもらうようにしましょう。
2. 医学的検査と医師の意見の必要性
後遺障害の認定には、医学的検査と医師の専門的な意見も欠かせません。
例えば、画像診断(MRI、CTスキャンなど)を行うことで、身体内部の損傷を視覚的に証明することが可能です。
また、医師の意見書は、症状の持続性や日常生活への影響を詳細に記載することで、認定を支える強力な証拠となります。
医師との緊密な協力により、後遺障害の存在をしっかりと証明するための資料を整えることができるでしょう。
後遺障害14級9号が非該当となった場合の示談金相場
後遺障害14級9号が非該当となった場合でも、示談金をもらうことは可能です。
後遺障害に認定されなかったとしても、交通事故の被害にあっていることに変わりはないため、示談金を受け取ることができます。
ただし、後遺障害に認定されない場合、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など一部の示談金は受け取れない点に注意してください。
後遺障害14級9号が非該当となった場合に受け取れる示談金に「入通院慰謝料」があります。入通院慰謝料の基準には、次の3種類があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
自賠責基準とは、国により定められた最低金額の基準で、「4,300円×対象日数」で計算されます。
対象日数は「初診から完治までの期間」か「実際に通院した日数×2」の短いほうが採用されます。
対象日数が60日だった場合、自賠責基準での入通院慰謝料の相場は25万8,000円です。
続いて、任意保険基準とは、各保険会社が設定している基準で、各社の基準は非公開です。
以前、各社統一で設けられていた基準では、入院した月数と通院した月数に応じて入通院慰謝料が定められていました。
以前設けられていた基準によれば、1ヶ月入院し、1ヶ月通院した場合の入通院慰謝料の相場は、37万8,000円です。
最後に、弁護士基準(裁判基準)とは、裁判の判例に基づいた入通院慰謝料の基準です。
軽傷時と重傷時で基準が異なります。1ヶ月入院し、1ヶ月通院した場合、軽傷であれば52万円、重傷の場合は77万円が入通院慰謝料の相場です。
保険会社は自賠責基準や任意保険基準の金額を提示してくるのが一般的ですが、弁護士基準(裁判基準)の金額を受け取れるように、粘り強く交渉してみてください。
入通院慰謝料以外の示談金には、次のようなものがあります。
- 治療関係費:治療費や通院交通費の実費を請求できる
- 休業損害:サラリーマンであれば「(事故より前3ヶ月間の収入÷実労働日数)×休業日数」が相場
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【まとめ】後遺障害14級9号非該当とならないために
後遺障害14級9号が非該当とならないためには、事故と症状の関連性を明確にし、事故直後から継続して通院することが重要です。
また、症状が一貫していることを記録し、重く持続的であることを証明するために、日々の記録を残しておくことも大切です。
医師と協力して診断書や医学的検査結果を充実させることで、認定の可能性を高めることができます。
本記事を参考に非該当にならないための対策を講じることで、後遺障害の認定を受けられる可能性を高めることができるでしょう。