医師の意見書が裁判で発揮する効力とは?活用されるケースを解説
目次
医師による医学意見書とは
医学意見書は、人間の身体や生命に関する医学的事項を解明するための裁判資料として、各種専門医がカルテや医療画像などから身体の状態や病態を分析し、医師としての見解を記載した文書です。
医学意見書においては、裁判において争点となっている事実や評価に対し、医学的観点による分析を専門としていない裁判の代理人弁護士の見解を裏付け、また同じく医学的観点による分析を専門としていない裁判官が下す判断内容を左右する重要資料となります。
医師による医学意見書の種類
我々は、主に以下の事案において医学意見書を作成しております。
交通事故事件
交通事故で争われる損害賠償事件の多くは、被害者の生命・身体に発生した傷害結果を金銭的に評価し、賠償金額というかたちで明確にするものであり、その医学的分析が最も重要な争点となります。
- 受傷の有無
- 後遺障害発生の有無
- 後遺障害の等級
- 後遺障害の内容と逸失利益の程度
上記のようなあらゆる局面で医学的分析を行い、判断対象者(相手保険会社、自賠責保険、損害保険料率算定機構、裁判官)に対し、明確で合理的な事実ないし評価を提供しなければなりません。
逆に当社の特徴は、被害者側のみならず加害者側の保険会社や弁護士からの依頼を頻繁に受けているというものです。
双方の依頼を受けている当社であるからこそ、より中立的でより合理的な判断を行うことができると自負しております。
労働災害事件
交通事故事件同様、労働災害により被害者である労働者の生命・身体に発生した障害結果を金銭的に評価し、賠償金額が設定されます。
その過程の中で、医学的分析が極めて重要な証拠となります。
- 受傷の有無
- 後遺障害発生の有無
- 後遺障害の等級
- 後遺障害の内容
- 逸失利益の程度
上記のようなあらゆる局面で医学的分析を行い、判断対象者(使用者、労働基準監督署、裁判官)に対し、明確で合理的な事実ないし評価を提供しなければなりません。
意思能力鑑定事案
高度高齢化した社会において、認知症等の傷病を持つ高齢者の法律行為には、常にその行為の持つ意味を適切に理解して判断するべき能力(意思能力)が必要となります。
また、相続事案における遺言能力、生前贈与の有効性等、相続前・相続後のあらゆる局面で被相続人(贈与者)等の適切な意思能力を判断することが必要となります。
当社は、極めて優秀な脳神経領域の専門医を多数所属させており、様々なケースに対応した意見書を作成しております。
関連記事:交通事故裁判に提出する医師の鑑定書はどこに依頼すれば良い?作成費用の目安も解説
交通事故事件における意見書
- 画像鑑定報告書
- 異議申立用意見書
- 訴訟用意見書
交通事故における意見書は、主に事故後に後遺障害が残った場合などに必要とされます。
訴訟による損害賠償金の請求や示談金の増額には、法的に根拠のある証拠を提示しなければなりません。
後遺障害を認定してもらうために2つの申請方法があり、被害者側から申請する「被害者請求」と、加害者側の保険会社に申請を依頼する「事前認定」に分かれます。
賠償金を減らさないためには被害者請求を行う必要があるので、医師の意見書による治療の経過や治療方針などを証明しなければなりません。
事前認定は申請の手続きを簡略化できますが、後遺症に対して適切な等級認定がされないことが多いです。
後遺障害に異議を申し立てる際、医学意見書の存在は重要です。
再審査を行う際に欠かせない書類となるでしょう。
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遺言能力鑑定に関する医師による意見書
遺言能力鑑定の意見書とは、「遺言を遺せる十分な能力がある」もしくは「それがない」ことを証明する書類です。
遺言能力鑑定の医師意見書を提出したからといって、必ず裁判等が有利になるとは限りませんが、膨大な画像と資料を読み込み、専門知識を持って作成された意見書は、強い味方となってくれるでしょう。
また、そもそも医師によっては、遺言能力鑑定書を作成しないことも多いです。
遺言作成時の意思能力の有無は、医師によって意見が異なる場合があるためです。
例えば内科医と精神科医では治療の経過や薬の種類など、お互いが知らない情報によって診断結果が変わった事例も存在します。
遺言能力鑑定に対する医学意見書は、裁判や訴訟時に遺言作成能力を証明するために有効ですが、必ずしも法的な判断に結びつくとは限らないため注意が必要です。
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医師による画像鑑定報告書
画像鑑定報告書とは、レントゲンやCT、MRIなどによって診断結果を証明するための書類です。
放射線科の診断専門医が画像を鑑定し整合性を判断します。
主に交通事故の後遺障害などを立証する際に用いられることが多く、裁判の内容に異議を申し立てる際に有力な証拠として利用できます。
画像鑑定報告書を添付することで、裁判や後遺障害認定の場において、主張される症状に対して整合性のある客観的な証拠として認められやすくなります。
しかし、画像診断は臨床診断と合わせて証明する必要があるため、画像鑑定報告書のみでは裁判における証拠しては不十分です。
その他、診断を受けた医院や医師の権威性も重要となるため、実績のある医師のもとで画像鑑定報告書を作成しましょう。
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医師による医療過誤に関する意見書
医療過誤とは医療従事者の人為的なミスのことで、医療過誤の意見書は医療行為が適切であったかどうかを立証するための参考資料として使われます。
医療過誤と医療ミスの違いは、「未然に防ぐことができた事故」だったかどうかです。
医療過誤は不注意や医療従事者の連携ミスなどといった、事前の対策不足のことを指します。
そのため、医療過誤が疑われる場合は損害賠償を求めることができますが、医学的な観点から治療が間違っていたことなどを立証するのは非常に困難です。
そこで、弁護士や医師の協力が必要になります。
そもそも病院側が医療過誤を認めるケースは少ないので、被害者自身で裁判に必要な書類等を作成しなければなりません。
どうしても納得できない場合は弁護士などに相談し、医療過誤の意見書を作成しましょう。
関連記事:医療過誤の相談はどこにすれば良い?正しい対処法や注意点も解説
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医師による労災認定に関する意見書
労災認定の意見書は診断書とともに添付される資料で、後遺障害認定などにおいて必要になります。
企業側の診断書だけでは後遺障害に認定されないことがあるため、認定の可能性を高めるために有効な書類といえます。
他には精神障害や病気なども労災認定に該当するため、医師の診断書に加えて意見書があることで労災認定がされやすくなるでしょう。
鑑定の結果や療養の経過などが細かく記載されていれば、客観的に労災であることが立証される可能性があります。
そもそも、労災認定の判断基準は「業務遂行能力」と「業務起因性」を証明する必要があるため、ケガなどの外傷の傷以外は労災に認定されにくい傾向があります。
そこで、診断書に医学意見書を添付することで、パワハラやセクハラなどによる精神の症状にも労災認定が認められやすくなります。
医師による意見書を作成するメリット
医学意見書は診断書の事実確認に加えて、医師や病院の名前から信頼を得やすいです。
そして患者や被害者の訴えが裁判や訴訟において有効になり、事実確認が難しい病気や精神疾患などでも容認されやすくなります。
特に、障害が残る病気の場合は、裁判において、事件事故と被害の関連性を証明しなければなりません。
医学意見書によって判定が覆る可能性があるので、書類作成の費用を払ってでも十分なメリットが得られるでしょう。
基本的に裁判や訴訟などは事実を論理的に証明する場なので、医師の意見書は医療知識を知らない裁判官を説得するために有効な書類です。
医師意見書作成の費用感
医学意見書を依頼する場合の費用は、20万円〜50万円程度が必要になる場合が多いです。
依頼先によって費用に差がありますが、20万円を下回ることは少ないと考えましょう。
画像鑑定報告書のように、比較的シンプルなものに関しては、安く依頼することもできます。
追及したい点が画像所見のみである場合など、依頼内容を精査することで、費用を安く抑えることができる場合もあるので、弁護士などと相談する際には、よく検討するようにしましょう。
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意見書サービスの事例について
この記事の監修者
不破 英登
経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |