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本件事故では、信号待ちのために停車していた被害車両に加害者が被害車両を確認しないまま加害車両を発進させ、被害者が後部座席に乗車していた被害車両に追突した。
被害者は、交通事故直後から手を動かすことができず、ベルトを外すこともできないなど、手先にひどいしびれが走る様な状態になった。そして、事故直後受診した病院では中心性頸髄損傷と診断された。しかし、事前認定では交通事故と中心性頸髄損傷との因果関係がなく、中心性頸髄損傷の治療のために施行された頸椎椎弓形成術と本件交通事故との因果関係もないという理由から後遺障害認定非該当との判断を受けた。なお、被害者は事故以前に別の交通事故に遭遇しており、その事故ではOPLL(頚椎後縦靭帯骨化症)を確認していた。
事前認定に対する異議申し立てとして、被害者の体に残存する症状について、交通事故と残存症状の因果関係を医師意見書によって裏付けしていただきたい。
Evaluation
本件の画像評価の一部を掲載します。
交通事故直後の頸椎MRI。C4-7レベルにおいて脊柱管狭窄を認め、C4/5において最も狭窄が強い。このレベルにおいて脊髄内のT2高信号変化を指摘することができる(矢頭)。中心性頸髄損傷の所見と考えられる。(作成医所見)
頸椎椎弓形成後である。C3-6の4椎弓に椎弓スペーサーが挿入されている(矢頭)。同部において良好に除圧されている。(作成医所見)
Opinion
本件では、①受傷機序 ②臨床経過 ③画像所見 の3点から、交通事故と残存症状の因果関係を主張した。具体的には、⑴交通事故と中心性頸髄損傷の因果関係、⑵頸椎椎弓形成術と交通事故の因果関係があることを意見した。また、過去の交通事故にて受傷していたOPLL(頸椎後縦靭帯骨化症)は本件事故にて負った中心性頸髄損傷には影響しないことも併せて意見した。
Appraisal results
まず、診療記録と画像所見から、過去の交通事故にて負ったOPLLは神経学的異常所見が指摘されておらず、事故以前の筋力低下やしびれはないと判断した。過去の事故の脊柱管狭窄率40%と本件交通事故の脊柱管狭窄率41%を比較しても、ほぼ変化がないことから、OPLLの自然経過としての筋力低下も否定した。
次に、画像所見から中心性頸髄損傷の診断の妥当性を示した上で、受傷機序や臨床経過、供述調書の記述から中心性頸髄損傷が被害者の既往歴によるものではなく、たしかに交通事故に起因するものであり、後遺障害が残存していることを認めた。
最後に、本件交通事故の受傷後5日目に施行された頸椎椎弓形成術について、神経学的異常のない既存のOPLLに対して予防的に手術する必要がないことを示した後に、早期手術の必要性を示し、この手術が中心性頸髄損傷の治療のために行われた手術であることを認めた。
以上の点から、自賠責保険会社の下した後遺障害非該当という判断は誤りであると意見した。
Voice
保険会社に対する異議申し立ての結果として11級該当の認定を受けることが出来ました。