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A(被相続人・男性)が亡くなった後、「Aの全財産をXに相続させる」との公正証書遺言書が出てきた。そのYより公正証書遺言書の有効性をめぐって訴訟になっている。
Aさんの認知能力を鑑定し、当該の公正証書遺言を作成するに足る遺言能力を有していたかについて意見を述べてほしい。
Image evaluation
亡くなる1年前の時点で実施されたMini-Mental State Examination (MMSE)は24/30点で、軽度認知障害(MCI)に相当していました。このMMSEを評価すると、部分的な見当識障害と注意障害の存在は確認できましたが、記銘力は保たれていました。
しかしその1年後の介護認定評価では幻視、幻聴、妄想、昼夜逆転、意思伝達能力や短期記憶障害などを指摘されており、進行性の認知機能障害であったことが確認でき、認知症であると判断されました。リハビリ中に起立性低血圧や手の震えが認められたことから、レビー小体型認知症と判断しました。
レビー小体型認知症は認知機能の変動が特徴とされていますが、本件においては注意障害や記憶障害、意欲の低下や幻覚妄想等の精神症状を呈していたと考えられ、周囲からの影響を受けやすい状態にあったと評価をしました。
opinion
遺言書作成の1か月前の時点で意欲低下、幻視・幻聴、妄想、昼夜逆転、徘徊等が確認されており、またその他の身体症状から、レビー小体型認知症を発症していた可能性を指摘しました。
レビー小体型認知症の認知機能の変動のしやすさから遺言書作成時点の理解力と判断力を特定することは困難であるものの、日常の意思決定を行うための認知能力の低下、短期記憶の問題、意思の伝達能力の低下が認められており、理解・判断能力が完全であったとは考えにくく(保佐相当)ため、周囲の影響を受けやすかったと考えられました。
遺言作成時の付添人であるXの意向を多分に受けた可能性があり、従前の本人の意思とは異なる内容の遺言書である可能性を意見しました。
Appraisal results
上記のように客観的なデータを医学的に解釈し、認知症の診断、重症度や個別の認知機能障害の評価、精神症状を含む行動心理症状(BPSD)の評価を行った上で、遺言内容と照らして遺言内容は本人の従前の意思とは異なるものであったと鑑定しました。
認知症の遺言鑑定では、日常生活や社会生活状況がわかる客観的資料(診療録や介護保険認定調査記録など)、神経心理学的検査結果、血液検査、頭部画像検査が揃っていると、精度が高くなります
しかし、場合によっては部分的にしか情報が得られない場合もあります。弊社の遺言鑑定においては、脳神経内科専門医、認知症専門医、放射線画像診断専門医など複数の専門医で評価を行います。脳疾患や認知機能障害における判断能力などについて、多角的に検証して意見書を作成することができます。
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