Purposs
被害者の症状として圧痛尺骨神経領域しびれがあり。
そして TFCCテスト陽性/NCV異常なし/DRUJなし/尺骨突き上げなし
→MRIも合わせてTFCC損傷と診断
Issue
争点1・・・尺骨茎状突起部の遊離骨片は陳旧性か新鮮骨折によるものか
争点2・・・尺骨神経障害および関節可動域制限が尺骨骨折によるものか
争点3・・・「居所に頑固な神経症状」及び「高度な関節可動域制限」があり,自賠責等級
10級10号あるいは同12級13号が認められるか
Opinion
一般的に新鮮骨折であれば辺縁が不整であることが多いが、本症例においては遊離骨片も極めて小さく、画像所見をもって骨折が陳旧性あるいは新鮮であったかを判別することは困難である。 本件では甲第24号証においてMRI所見(甲第27号証)で三角線維軟骨複合体損傷(TFCC損傷)が診断されている。TFCC損傷は尺骨茎状突起骨折の存在を支持する(文献1)。文献自体は関節内橈骨遠位端骨折に伴うTFCC損傷に関して述べたものであるが、尺骨茎状突起骨折が存在すればTFCC損傷が生じることが想定されるという内容が記載されている。逆にいえばTFCC損傷が存在していると尺骨茎状突起骨折の可能性があるということになる。本件で示されている遊離骨片は極めて小さなものであり辺縁の形状では画像診断者の主観も考慮されるため陳旧性or新鮮か判断困難であるが、当該事故でTFCC損傷が生じていたことは尺骨茎状突起骨折を合併していた可能性を示唆する。 なお、甲第15号証 4(1)12行目に記載されているように「関節面の不整が認められない」事と「右手関節の高度な可動域制限」の間には因果関係を立証できない。つまり遊離骨片の関節面の不整の有無をもって手関節可動域制限を説明することはできない。
本症例では甲第24号証において、診察を受けており、理学所見およびMRI所見(甲第27号証)の結果からTFCC損傷と診断されている。名古屋記念病院での神経伝達速度検査(NCV)では尺骨神経の伝達速度に関して異常が認められていない。しかし、神経伝達速度の値は軸索変性の同定には役立つが、痛みの有無については関連性がない(文献2)。よってNCVに異常がないことをもって尺骨神経障害の存在を否定できるものではない。 甲第3号証および第19号証から尺骨神経領域の知覚低下、疼痛、可動域制限(健側30%以下)、日常生活および就労への著しい支障を生じている事が分かる。疼痛や可動域制限は他の原因によっても生じうるが、尺骨神経領域の知覚低下は尺骨神経障害の存在を示すものである。
1)で検討したように、本件では画像所見をもって尺骨茎状突起骨折が存在するか否かを判断することはできないが、少なくともTFCC損傷は存在している。本件事故によってTFCC損傷を生じるほどの外傷を手関節尺側に受けた結果、尺骨神経障害を生じたと判断する。
また事故後に尺骨神経領域のしびれ等が出現したという時系列を鑑みても交通事故でのTFCC損傷(および尺骨茎状突起骨折の可能性)が主因と判断する。
甲24号証および甲27号証で示されたTFCC損傷は手関節周囲の靭帯損傷であり、手関節可動域制限を生じる。
よって仮に骨折が本件に関与しないとしてもTFCC損傷を生じるほどの外傷を受けたことによって本件の神経症状および関節可動域制限が生じたと判断できる。
4)局所に頑固な神経症状を有するか否か
交通事故以前は問題無く就労できていたが、事故後に残存した障害によって就労状況が変化した。診察所見でも尺骨神経領域のしびれが認められており、TFCC損傷および尺骨神経障害が原因で日常的に物がもてない、握力低下、子供を抱っこできない等肉体的にも精神的にも苦痛を感じている(甲第33号証参照)。
このことから日常生活および就労への影響が甚大であり単純な神経症状と見なすのではなく、頑固な神経症状が残存していると判断する。
Appraisal results
第1:尺骨茎状突起部の遊離骨片が陳旧性か新鮮骨折によるものか画像所見をもって判断することは困難である。
第2:TFCC損傷は尺骨茎状突起骨折の存在を示唆するものであり、本件事故によって尺骨茎状突起骨折およびTFCC損傷を伴うほどの外傷を手関節尺側に受けた結果、尺骨神経障害を生じたと判断する。
第3:日常生活および就労に現在も支障を著しくきたしておりTFCC損傷および尺骨神経障害のため「局所に頑固な神経症状」および「高度な関節可動域制限」を有し、自賠責等級10級10号あるいは同12級13号に相当すると意見する。
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