交通事故裁判に提出する医師の鑑定書はどこに依頼すれば良い?作成費用の目安も解説
交通事故の加害者または被害者となり、ケガをさせてしまった、もしくはしてしまったという経験はあるでしょうか。
そのケガが重く、後遺障害となるような痛みやしびれが残る場合もあるでしょう。
自賠責保険会社との交渉を行うことは個人では難しく、時には裁判になってしまうこともあります。
そんな時、頼りになるのが医師の鑑定書(私的意見書)です。残ってしまった痛みやしびれを医学的・客観的に証明できます。
この記事を読めば、医師の鑑定書がどのような場合に必要か、どんな手順で依頼・作成できるのかがわかります。
目次
交通事故裁判はまず誰に相談すれば良い?
交通事故の被害に遭ったとき、または加害者となってしまったとき、裁判で争うとなると法的な知識は不可欠です。
本人のみで保険会社と示談交渉に応じることも可能ですが、保険会社の担当者は交通事故処理のプロです。
保険会社としてはできるだけ支払う保険金を低く抑えたいため、さまざまな交渉術を駆使してきます。
法律の知識がない方が保険会社の担当者と示談交渉に応じてしまうと、本来受け取れるはずの保険金よりも低い金額になるケースは少なくないのです。
もし相手方との交渉が決裂し裁判で争うことになった場合、当事者が相手方の弁護士と対等に争うことは難しいため、弁護士を立てるのが一般的です。
裁判所に提出する書類の作成から訴訟まで一連の業務を担当でき、もっとも安心して依頼できる法律専門家が弁護士といえるでしょう。
なお、交通事故裁判に限らず、保険会社との示談交渉も弁護士に任せることによって、より多くの保険金を受け取れる確率も高くなります。
ただし、弁護士に依頼する場合には着手金や成功報酬といった費用がかかり、保険金から弁護士費用が差し引かれてしまうため注意が必要です。
なお、交通事故裁判は弁護士だけでなく、司法書士に依頼することも可能です。
司法書士は弁護士に比べて費用が割安に抑えられるメリットがありますが、140万円までの訴額にしか対応できないというデメリットもあります。
鑑定書の作成はどんな医師に依頼すれば良い?
交通事故裁判では、さまざまな証拠や根拠をもとに加害者側と被害者側が争うことになります。
一口に証拠といってもさまざまなものがあり、破損した車の写真や目撃証言、ドライブレコーダーの映像なども重要な物証となるでしょう。
しかし、根拠となるのは物的証拠だけとは限りません。
もし事故によって身体的な被害を受けた場合、それ自体が証拠として採用されることもあるのです。
裁判においては、弁護士や司法書士が必要と判断すれば医師の鑑定書である「私的意見書」を提出するケースもあります。
もし、医師による診断の結果、裁判を進めるうえで有利な所見が認められた場合、それを意見書として提出すると良いでしょう。
ただし、鑑定書の作成にあたっては、整形外科や脳神経外科など負傷した部位に応じた専門医や、臨床経験が豊富な医師に依頼することが重要です。
同じ医師だからといって専門外の医師が意見書を作成してしまうと、信ぴょう性が低いと判断され反論の余地を与えてしまう可能性もあります。
どうやって医師を選定すべき?
では、鑑定書の作成に対応できる専門医や臨床経験が豊富な医師はどうやって探せば良いのでしょうか。
もし、普段から診てもらっているかかりつけ医がおり、鑑定書の作成に応じてくれる場合にはその医師に依頼するのもひとつの方法です。
より高い信頼性を求めるのであれば、怪我の部位や症状に応じて専門医に相談するのが良いでしょう。
ただし、医師によっては鑑定書の作成経験が少なかったり、そもそも対応が難しいと断られてしまうケースもあります。
また、本人が複数の医療機関を回って専門医と直接交渉するのは決して簡単なことではありません。
そこで、そのような問題を解決する方法として、鑑定書の作成を専門に請け負っている業者に相談してみるのもおすすめです。
専門業者は独自のネットワークや医療機関とのつながりをもっており、あらゆる部位に対応した経験豊富な専門医を紹介してくれます。
怪我の部位や症状によっては、整形外科や脳神経外科以外にも、放射線科などさまざまな専門医の知見が求められるケースも少なくありません。
身体の部位ごとにかかりつけの専門医がいるケースは極めて稀であるとも考えられるため、まずは専門業者に相談することでスムーズに医師を選定できるでしょう。
鑑定書作成にかかる費用の目安
交通事故裁判において強力な武器となり得る鑑定書ですが、大きな問題は作成費用が高額であることです。
怪我の範囲や部位、症状によっても多少金額は異なりますが、一般的に40万円程度の費用がかかります。
これはあくまでも鑑定書の作成費用のみであり、実際の裁判となるとこれに弁護士費用も加算されます。
裁判が長期化すれば弁護士費用も高額となり、追加で鑑定書の作成が求められる場合もあるでしょう。
高額な費用を少しでも低減するために有効な方法として、弁護士費用特約の活用が挙げられます。
自動車任意保険や生命保険、医療保険のプランによっては、オプションで弁護士費用特約を附帯しているケースも少なくありません。
もともとは弁護士に委任する場合にかかる費用を保険金として支出するための特約ですが、鑑定書作成も特約の範囲に含まれるケースも多いようです。
弁護士費用特約はすべての任意保険に必ず附帯されているものではなく、あくまでもオプションとして用意されていることが多いため、まずは現在加入中の保険内容を確認しておきましょう。
鑑定書の作成に要する期間
鑑定書の作成にあたっては検査画像や診断書、現在の状況なども加味しながら専門医が判断します。
怪我の範囲や部位によっても鑑定書作成に要する期間は多少異なりますが、一般的には2か月程度またはそれ以上の期間が必要とされます。
もし、弁護士や司法書士から鑑定書の作成を打診された場合には、できるだけ早めに医師に作成を依頼することで裁判をスピーディーに進められるでしょう。
鑑定書があれば必ず裁判に勝てるのか?
高額な作成費用がかかる鑑定書ですが、「実際のところ裁判でどの程度の効果が見込めるのか?」と疑問を抱く方も多いはずです。
大前提として、裁判所に鑑定書を提出したからといって確実に裁判に勝てるものではありません。
交通事故裁判では、加害者側と被害者側の主張を公平に聞き入れたうえで、客観的な証拠や根拠をもとに判決が下されます。
また、鑑定書を提出するのが被害者側だけとは限らず、加害者側も提出してくるケースもあります。
しかし、だからといって鑑定書が一切不要ということではなく、客観的証拠のひとつとして提出することで裁判を有利に進めやすくなります。
まとめ
日常的に車を運転する方はもちろんですが、運転免許を持っておらず自ら運転する機会がない方にとっても、交通事故のリスクはゼロとは言いきれません。
もし、交通事故の加害者または被害者となってしまい、相手方との示談交渉がまとまらなかった場合には裁判で争わなければなりません。
裁判に発展した場合、司法書士または弁護士に依頼することとなりますが、裁判に必要な証拠集めの際に医師の鑑定書が求められるケースもあります。
鑑定書があるからといって必ずしも裁判に勝てるという保証はありませんが、一つひとつの証拠の積み重ねは裁判を有利に進めるためには不可欠です。
保険に弁護士費用特約を附帯していれば費用を抑えられることもあるため、万が一のときに備えて今回紹介した内容を覚えておきましょう。
この記事の監修者
不破 英登
経歴
2009 | 愛知医科大学医学部医学科 津島市民病院 |
2011 | 名古屋第二赤十字病院 放射線科 |
2016 | 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教 |
2018 | 豊田若竹病院 放射線科 YKR medical consult設立 |
2018 | 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師 |
2021 | YKR medical consult 代表就任 |
【資格】 産業医・放射線科診断専門医 |